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「火の鳥」手塚治虫 Phoenix by Osamu Tezuka


 

鉄腕アトムがテレビで放映されたのは小学校の低学年の時。優しい心を持ったロボットが苦難に打ち勝っていく分かりやすいお話で、毎週欠かさず観たものです。

 

ところが次に読んだ「火の鳥」は当時の私には難しく、2巻でギブアップしてしまいました。火の鳥が光に包まれながら進み、その後をたくさんの人間たちが歩いていく最後のシーンは、さっぱり訳が分かりません。でもなぜか、何十年も心に残っていました。

 


 

ごく最近、そのシーンを読み返してみたくなり図書館で2冊借りてくると、なんとまぁ、めちゃくちゃ分かりやすいではありませんか。人間の生と死、永遠の命を渇望するあまり死んでしまう矛盾、権力と支配への欲望、政治と宗教、人類の進化と滅亡、人類による地球の破壊など、壮大なテーマが深く掘り下げられ、全く退屈しません。「半世紀前によくぞここまで描いたな手塚治虫!あんたは偉い!!」…と、何度膝を打ったことでしょう。

 

社会科の授業で「いの一番」に習う世界四大文明(三大だったっけ?)。何千年も前に天文学、医学、哲学、芸術、生活技術…どれも現在と遜色ないほど発展するのに、必ず跡形も無くなってしまうのは何故?といつも疑問でした。肝心な疑問に誰も教えてくれないので「年号と人物名を暗記しても無意味やぁ」と投げ出し、歴史は嫌いな教科ナンバーワンでした。

 

その答えが火の鳥にありました。

 

それだけではありません、火の鳥はレイキそのものでした。

 

「火の鳥は宇宙生命(コスモゾーン)」「ロシアでは大地から生まれた火の鳥--ファイア・バード、中国では仙人の鳥とされホウオウ鳥など各地で色々な呼び方をされる」と手塚治虫は書いています。日本では霊気と呼ばれたエネルギーが、ギリシャではプネウマ、インドではプラーナ、ハワイではマナ、中国ではチーと呼ばれたように。

 

永遠の命を得るために火の鳥を捕らえようとして死期を早める。権力を手にすればするほど、支配欲にとりつかれて殺し合い滅んでいく。驚くほど文明を進化させ、自身の手でそれを破壊する。人間たちの争いのために地球が病んでいく----

 

2巻のラストは、人類が何度も何度も同じ過ちを繰り返すのを見守りながら、火の鳥は「今度の人類こそ正しい方向へ進化していくことを信じて待っている」のです。(12巻あるうち、時系列でいうと2巻が最終巻)

 

もちろん、ただ見ているだけではありません。嘆き悲しみ、悩み惑う人間の心に、火の鳥は進むべき道を伝えてくれるのです。私たちに生きる力と生きる意味を与えてくれるレイキと同じです。

 

半世紀かかってやっと手塚大先生のメッセージを受け取られるようになりました。

 


 

というわけで、母の面会のついでに、宝塚の手塚治虫記念館へ行ってきました。うん十年前に子供たちを連れて行ったっけ。

 

ちょうど開館三十周年を記念して火の鳥を特集していました。ありがたい偶然。

 

先生が子供の頃に書いた紙芝居や昆虫標本の写生を前にすると、「あなたは天才ですね」とひれ伏すしかありません。

 


 

火の鳥を書くきっかけのようなお話(休憩 INTERMISSION )の原画にある「大宇宙が創造されたとき、その大きなエネルギーは宇宙に充満し…」って、これもレイキのことですよね、手塚先生。「生物が誕生するときにそのエネルギーが体の中に入り、生き物が死ねば離れてまた空中に散らばる…」って、やっぱりそうですよね。火の鳥の本編には「永遠の命など追い求めずに、今を大切に生きなさい」という言葉が何度も出てきます。「今日だけは」のレイキの教えです。

 

 コチラも面白い記事です→  二つの「火の鳥」~バレエ・リュスと手塚治虫

 

Phoenix (Series) TEZUKA OSAMU official site 

Osamu TEZUKA is one of the greatest and most popular manga artists.  His life work, "Phoenix" is about Reiki; the Life energy that fills the Universe.  The Phoenix has been watching over us for millions of years, hoping that we will live fulfilling and meaningful lives and establish everlasting peace on the earth.

 

Osamu Tezuka's works are translated in many languages. 


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コメント: 2
  • #1

    Eiko (土曜日, 29 6月 2024 01:40)

    Hi Fumi san,
    thank you for the very interesting story!
    i hope i can read 'The Phoenix' in english somewhere, someday - it sounds like a really great story!
    Did you know, that Osamu Tezuka also made a manga about 'Buddha'? it looks really great too!

    But for now - i am glad, that i found 'Astroboy' on youtube � .. i didn't know it before.

    Byebye from germany,
    E. �

  • #2

    Fumi (日曜日, 30 6月 2024 13:41)

    Dear Eiko,
    English translation is available. Why don't you try your local library first?
    Thank you for the comment about Buddha. I've added the picture of the books at the bottme of this page.
    Fumi